今回は、Jake Shimabukuro 氏プロデュースの元 Takamine で製作するソプラノウクレレ MIGM-S1 について、販売に先駆け一足早くその詳細をご紹介します。
それでは、こだわりのスペック(仕様)を一つずつ紹介していきましょう。
ネックはマホガニー製。
「手ごろな価格」であることもこのウクレレの大事なコンセプトの一つなので、ボディにはマホガニーの合板材を使用。
しかし、一般的にボディに使用される木材料については、 高級モデルで使われる「単板材」よりも廉価版で使われることの多い「合板材」の方が音色の面で劣ると言われます。
「手ごろな価格」であるために「音色」に対して安易に妥協してしまっては、Jake と Takamine のコラボレーションに期待してくれている皆さんに対して説明ができない!
これは、「ソプラノウクレレというとても小さなボディに、コストをかけずに如何にして豊かな響きを与えることができるか」という命題に立ち向かうのと同じことです。
おっと...、スペックの紹介を始めたと思ったら、いきなり難しい話題にそれてしまいました。「音楽」はリラックスして音を楽しむもの。「楽器」作りも楽しみながら行なわなければいけません。私としては考えをどんどん掘り進めていくプロセスが楽しみでもあるのですが、話を元に戻して少しテンションを下げて進めていきましょう。
「木」は加工されてからも空気中の水分を吸ったり吐いたりしますので、使う人がそれを理解しておく必要があります。
「単板材」で作られた楽器も同様にそれなりのケアを心がけておかないと、音色が変わってしまうだけでなく、弦高が高くなるなど演奏にも影響を及ぼしてしまうことがあります。
その点「合板材」は複数枚の材料が層を成して作られていますので、このような湿度の変化に対しても比較的安定しており、多少の衝撃(落としたりぶつけたりなどは厳禁!!)が加わっても割れてしまう危険性が少ない丈夫な材料と言えます。
今回のウクレレのコンセプトに照らし合わせ、私たちはこの「合板材を使用して心地良い音を得る」ためにその構成を見直すと共に、力木(「ちからぎ」と読みます。ボディ内部の補強のことでその形状や配置により大きく音色が変わります。)や塗装他、後に出てくる「キーポイント」も含めた楽器としてのクオリティを上げるため、細部にいろいろな工夫、こだわりを盛り込み試作を繰り返しました。
私たちが試作したウクレレを手に取った Jake は、数フレーズを弾くと瞬時にその特徴や違いを感じ取ってしまいます。その手ごたえを直接彼から聞き、私たちのアイデアを彼に返す。彼の「ウクレレに寄せる情熱」と私たちの「ものづくりに懸ける情熱」が絡み合うすばらしい瞬間です。
このようなプロセスが何度となく繰り返され、ひとつひとつのスペックが決定されていったのです。
フィンガーボード、ブリッジは、重硬な木質のローズウッド製です。
このフィンガーボードには、同じローズウッドのバインディングが貼られています。ちょっと専門的な話になってしまうのですが、クラシックギターなどで多く見受けられるようにフレットの脚が指板の横から見える仕上げがされている場合、楽器を取り巻く環境の影響を受けてフレットが指板の横から飛び出してしまうことがあります。これによって演奏中に子供たちの肌が傷つけられることがない様に、ローズウッドのバインディングを巻いているんです。おそらくちょっと見ただけでは気づかないくらいの細かい工夫です。ちなみに、すべての Takamine ギターにもこの処理が行なわれています。
スケール(弦の長さ)は347mmと一般的なものですが、14フレットでボディとネックをジョイントしていますので、一般的な12フレットジョイントのソプラノウクレレと比べてボディに対するブリッジ(弦を固定する部分)の配置が変わるためにより暖かく豊かな音色が得られ、子供たちの小さな手でもハイフレット(19フレットまであります)まで弾きやすくなっています。
ウクレレ全体を見渡すととてもシンプルな印象を受けますが、その中でも特徴的なのは、やはり Jake がデザインしたヘッドストック(ウクレレの頭に相当する部分)でしょう。ロゴにも使われているハワイに生息する3本角のジャクソンカメレオンをモチーフとしています。
MIGM の活動などで子供たちにこのウクレレをはじめて見せるときに、「このウクレレの顔の形は何に見える?」というなぞなぞを出したりしながら、ウクレレに興味を持って親しんでもらいたいという Jake の想いがこのデザインにこめられているのです。(そうそう、この話は Jake が「ふれあいの旅プロジェクト」で話すまでお子様たちには内緒にしておいてくださいね。)
このヘッドの上の方に、「MIGM」の文字にカメレオンが乗っかったデザインのかわいいロゴがありますよね。
このロゴには、高級ブランド腕時計の文字盤と同じ技術が使われているんです。とても薄くて、カメレオンの尻尾の部分もハッキリと見えるでしょう? 実はこれも日本生まれの「巧みの技」の一つとして、さりげなくこのウクレレをサポートしてくれているのです。(爪でこすったりしないでくださいね。)
ここからはこのMIGM-S1が持つ楽器としての「キーポイント」について紹介していきましょう。
まずはナットとサドル。材質は高級モデルに使用されることの多いボーン(骨)です。プラスティックの成型品とは違いますので、ウクレレ1本ごとに手作りで仕上げられています。プラスティックやカーボンなどさまざまな素材が使われることがありますが、硬すぎず柔らかすぎないボーンを使用することで、張りがあり輪郭のハッキリした音色が得られます。
加えて、サドルには弦の硬度・太さによって変わってしまう音程を補正するための加工が施されています。
チューニングマシーンには、チューニングをする際に微妙な音程の調整が可能なギヤ式を使っています。ダイレクト式のものと比較すると、弦を交換する際にはギヤ比の分だけより多くペグ(ツマミ)を回す必要はあるのですが、いざ音程を合わせようとするとギヤが有効に働きとてもスムーズに調整することができます。
また、この糸巻きは世界的に高い評価を得 ている日本のGOTOH社製で高度な技術による削り出しで製作されているため、ギヤーの遊び(歯車どうしがスムーズに噛み合い動くための隙間)によるバックラッシュ(ペグを回したときに弦が巻いてある主軸が回転し始めるまでのゆるみによって、チューニングを終えた後に主軸が回転して音程が狂ってしまう現象)がありません。
使用している弦はダダリオ製のJ92。コンサートサイズのウクレレにも対応する若干太めの弦なのでメロウな音色を奏でます。
これらの「キーポイント」は、先ほど説明した「単板材」を使った高級ウクレレでさえ取り入れていないことがあるほどの高いスペックです。
Jake のこだわりがはっきりと現れていますね。
MIGM-S1 には、ロゴの付いた軽量性とクッション性に優れる EVA ケース(ブラックカラー)が付属しています。小さな子供から大人まで対応可能な伸縮機能を持つショルダーストラップが2本付いているので、リュックのように背負うことができます。日常の保管に便利であるだけでなく、子供たちが両手をふさがないで気軽に持ち歩けるように配慮されています。
このように MIGM- S1 の品質と価格のバランスを高い次元で調和させるために、ここ坂下工場で開発・設計を行い、私たちの技術指導の元で月に6000本余りの Takakine ギターを生産し世界中に送り出している中国工場で生産されます。
このウクレレは Jake と MIGM のスタッフたちが行なっている「Four Strings For Kids」 の活動をサポートするために主に子供向けに開発されたのですが、Jake ファンやウクレレ愛好者の方々にもご満足いただける楽器としての完成度を備えています。
音色を言葉で表現することはとても難しいのですが、このウクレレは一般的なソプラノウクレレと比較すると、優しく温かみのある音色に仕上がっていると思います。
Jake や MIGM のスタッフの方々と何度も打ち合わせを重ねてきましたが、Jake に会うたびに、とにかく「ウクレレが大好き」というピュアな気持ちと「Four Strings For Kids」 の活動に寄せる熱い想いが、私の心の中に深く浸透していきました。
ライブでの生き生きとしたプレイは、飾ることのない彼のライフスタイルそのものです。その卓越したプレーや音楽性はもちろん、彼の「人としての魅力」が多くのファンを魅了する理由であり、私自身も会うたびに元気をもらっていると強く感じます。
最後に、ここまで読み進めていただいた皆さんにとっては、MIGM-S1 の価格や販売開始時期が最も気になるところだと思います。
2010年春に販売開始という案内を楽器フェアにご来場いただきました客様にはお伝えしていましたが、Jake と Takamine のコラボレーション・プロジェクトとして完成度を高めるための試行錯誤を繰り返してきた結果現在に至ってしまいました。(その間、多くの方々からお問い合わせをいただきありがとうございました)
いよいよ世界に先駆け、8月14日から始まる「I LOVE UKULELE TOUR 2010」 の公演会場と 「nalo meli」 で販売が開始されます。
発売を記念して、会場で販売されるウクレレのケースに Jake がサインをしてくれるかも!?
MIGM-S1 発売に関する詳細は、こちらをご覧ください。
それではみなさん、梅雨のジメジメや夏の暑さに負けず
ギターやウクレレを持ち寄って
家族や仲間と一緒に
音楽を楽しみましょう。
Let's enjoy music!
Hiro
(親愛の情をこめて Jakeさんの敬称を略させていただきました)
MIGM SOPRANO Ukulele Specs
- Produced & manufactured by Takamine and Jake Shimabukuro
- Mahogany neck/body
- Rosewood fingerboard
- Rosewood bridge
- Rosewood fretboard binding
- Scale length = 347mm
- Soprano Style Only
- Includes high quality, semi-hard MIGM ukulele case
Jake's Key Points
- Bone nut
- Compensated bone saddle
- Gotoh tuning machine heads (made in Japan)
- D'Addario strings (set J92)
- 14 fret joint exposed instead of the standard 12
- Special headstock designed to represent the MIGM Hawaiian Jackson Chameleon's three horns