面取り担当のドナルド・クラウンです。
アバロン(貝)を使用したパーフリングは好き嫌いは別にして高級感が増します。作り手としましては手間がかかり結構大変ですし、ギターのグレードが高くなるのでいろいろ気も遣います。
アバロンを使用した構成のパーフリング(セル+アバロン+セル、または染木+アバロン+染木)を接着する手順は2種類あります。
A. バインディングを先に巻く
はじめにバインディングを巻き、その後パーフリングの溝にパーフリングをはめ込んで接着する手順
B. バインディングを後から巻く
パーフリングの内側よりパーフリングを順に接着し、最後にバインディングを接着する手順
どちらの手順で作業するかはギターのグレード(価格)、ウッドバインディングかどうかで大体決まっています。現在国内カタログに載っているアバロンを使用した構成のパーフリングのモデルはすべてBの手順で行っています。面取り工程を5年以上担当していますが、いまだに上記Aの手順でアバロンを使用した構成のパーフリングの溝の幅を決めるのに毎回かなり悩みます。
理由としてAの場合、パーフリングの溝が狭かったときパーフリングをはめ込む事が困難になり、無理矢理はめ込む事になるので作業効率がかなり落ちます。作業した者にしか分かりませんが、無理矢理はめ込むときの苦労はかなりのものです。注意しないとセルまたは染木やトップ材を傷つけてしまう事もあります。
僕もこの作業を担当しますが、自分が切削した溝ですので余計に腹が立ってきます。
逆に溝が広かったときパーフリングやバインディングとの間に隙間が生じます。理論的にはパーフリングの幅と同じ幅の溝を切削すればいいのですが、セル、染木ともに幅が均一でなくバラつきがあります。またバインディングを巻くと切削したときよりもパーフリングの溝の幅が若干狭くなることが分かっていますので、これらの事を考慮してパーフリングの溝の幅を決めなければなりません。0.05mm広いとゆるく、0.05mm狭いときつくて作業効率が悪くなるというかなり微妙なところで溝の幅を決めなければなりません。
溝の幅の許容範囲がかなり狭いため毎回悩み、作業者から「きつい」と言われることもしばしばです。
ドナルド・クラウン