初期のカタログにラインナップされたPT05Eはクラシック・ギターのボディにスティール弦を採用した独創的な製品として注目を集め、海外レコーディングに出向いた日本のアーティストの方々が逆輸入の形で持ち帰り、日本でも発売される契機となったモデルです。
「THE 60TH」「LTD2022」には、タカミネ・エレアコの原点を見つめるコンセプトの元、初期の特徴あるPT05Eのシルエットにカッタウェイを施したボディ・シェイプを採用しています。
【トップ材の木目方向】
THE 60THには、希少材となるソリッド・ハワイアン・コアをボディ全面に使用。天然木の美しさが際立つトラ杢は、粗密を繰り返す木目の為、通常のスプルース・トップと比較して剛性の方向が異なり、通常の内部構造では弦の張力に対しての強度も弱くなります。
【3ピース・ブレーシング】
響きを損なわず剛性を向上させる目的で、スプルースで黒檀を挟んだ3ピースのブレーシングを採用。重量を下げるシェイピングも施されています。スプルースなど一般的なギター・トップの木目は、弦の張られた向きと同様の縦方向となっています。ハワイアン・コアのトラ杢は波板のような構造の為、強度方向が90度異なります。弦の張力により引っ張られる方向に対して耐えうるようブレーシング自体の剛性を高める為、エボニーをスプルースで挟んで接着した3ピースの角材から専用のブレーシングを製作。ボディ・トップのカーブに合わせて底面を削った後、コア材のトップに接着し、ノミを使った手加工での削り込みにより仕上げられています。3層構造のブレーシングは剛性が向上する反面 質量も増えており、そのままではトップの振動を妨げてしまいます。ブレーシングの中央での高さをキープしつ、両側から削り込み三角柱の形状にする事で剛性を保ちつつ重量の軽減を実現しています。実際に最も振動に影響するトーン・バーを比較してみると、その重さはこの加工により20%以上軽くなっています。
この熟練を要する手加工は、高い技術を備えた工場長 櫻井規陽、高級機やアーティストのカスタム・ギター製作にも参加しているクラフトショップ所属のマスター・ビルダー広川徹によって、1本ずつ丁寧に行われています。
全世界60本限定となるプレミア・モデル「THE 60TH」は、ヘッドに鑑定書付きのダイヤモンドをインレイ。全ての塗装を仕上げてからの加工となる為、塗膜を傷めない溝堀り加工が必要となります。色々な作業方法を試し、最終的にドリル・ビットを用いた一般的なボール盤ではなく、プログラムを組んでNCルーターにより加工しました。緊張を強いられる最終工程でのインレイ作業は、工場長 櫻井規陽により1本1本細心の注意を払って行われています。
60年目のダイヤモンド婚にちなんで、伝統的なエクセレントカット・パターンを図案化しレーザー加工により正確に切り出し製作したダイヤモンド・ポジションを12フレットにインレイ。光り方が異なる複数のアクリル素材から微細な部品を切り出すレーザー加工の精度と、丁寧に組み合わせるハンドクラフトによって製作されています。
リミテッド・モデルにふさわしい煌びやかなアバロン・インレイのボディ・トリム。
THE 60THは、トップだけでなく、バック、サイド、ヘッドにも施されたアバロン・インレイの鮮やかさと、天然杢が美しいメイプル・バインディング、ボディ材のコア、それぞれの色調の対比と精緻な手加工の技術をお届けする、プレミア・ギターならではの装飾となっています。
【トリムの貝細工】
THE 60THは、アバロン・トリム同士が交差する箇所が何カ所もあり、双方を隙間なくつなぎ合わせるインレイの“トメ”細工の仕上がりは、堅実な日本のクラフトマンシップならではの技術です。90°で組み合わされた箇所を例に見ると、ノミの刃に直交するアバロン・ラインを映して直角になるように角度を合せ、垂直に刃を落とす事によって的確に45°にカット、同様の作業で45°にカットしたもう一方のアバロン・ラインと隙間なく継ぎ合わせています。非常に難易度の高いこの作業は、高級機のアバロン・インレイを手掛けてきた二人の熟練工によって行われています。
THE 60TH専用ハードケースは、少量のオーダーメイドを手掛けてきた信頼ある日本のメーカーに製作を依頼。フィッティング・テストからケース・ポケット蓋の構造など細部に渡る慎重な検討を経て製作されています。